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放射線遮蔽設計法に係るワークショップが開催されました。

 令和2年8月7日(金)、標記のワークショップが、TV会議で開催されました。本ワークショップは、放射線遮蔽の分野において、国内で開発されている計算コード等の利活用を促進するため、当該分野に関連する計算コード等の開発状況及び標準・ガイドラインの整備状況に関して、利用者との情報交換を行うことを目的としています。

 本ワークショップは、日本原子力学会・放射線工学部会主催、原子力学会・標準委員会・廃止措置分科会及び放射線遮蔽分科会共催で、3年前から開催されているものです。

 参加者は、年々増加しており、今回は約120名の参加者がありました。

 当講座からも、原研・JAEAにおける遮蔽研究の変遷について、レビューの講演を行いました。

 原研・原子力機構での歴史 放射線遮蔽設計法WS .pdf

 

本ワークショップのプログラム及び概要は以下です。

プログラム

10:00-10:10 挨拶・事務連絡

10:10-12:00 遮蔽計算用核データ等について

 ・「JENDL特殊目的ファイルと放射化断面積」

               岩本 修 氏(JAEA)

【講演概要】汎用ファイルは主として原子炉の核計算のために開発されてきたが、多様な放射線利用に対応するため、ドシメトリーファイル、ガス生成断面積ファイル、放射化断面積ファイルなどの中性子反応に関するデータが開発された。その後も広がりを見せ、陽子、α粒子、光子などの入射反応のデータファイルも公開されている。JENDLで開発してきた特殊目的ファイルとその主要なデータの一つである放射化断面積について紹介する。

 

 ・「放射線遮蔽ハンドブック」

               上蓑 義朋 氏(日本アイソトープ協会、元理化学研究所)

【講演概要】原子力学会「遮蔽計算の応用技術」研究専門委員会は、2020年3月に「放射線遮蔽ハンドブック -応用編-」を上梓した。2015年に刊行された「同 -基礎編-」と合わせ、最新の放射線遮蔽工学が集大成された。ここでは刊行に至るまでの経緯と、旧版である「ガンマ線遮蔽設計ハンドブック」、「中性子遮蔽設計ハンドブック」、及び内外の他の放射線遮蔽に関する文献との比較をもとに特徴を紹介する。

 

 

 

 ・「電磁カスケードモンテカルロ計算コードEGSの開発と光子断面積」

               波戸 芳仁 氏 (高エネルギー加速器研究機構)

【講演概要】EGSは1960年代からSLACを中心に開発が続けられている電磁モンテカルロ計算コードである。PHITSコードではegs5(最新版)の主要な内容を使えるようになっている。毎年使用方法の講習会と研究会を行っている。光子と物質との相互作用として、光電効果、レイリー散乱、コンプトン散乱、電子対生成を扱うため、その断面積を計算に用いている。電子の反応としては、制動放射、多重散乱、連続減速、陽電子消滅などを扱う。

 

12:00-13:00 昼食休憩

 

13:00-13:50 国内における放射線遮蔽に関する研究の歴史について

 ・「原研・原子力機構における遮蔽研究の歴史」

               中島 宏 氏(北海道大学、元JAEA)

【講演概要】原研・原子力機構における遮蔽及びその関連研究は、組織の様々なところで独自に行われてきた。それは、原子力施設が建設されるところには必ず遮蔽があるからであり、多種多様な遮蔽設計が行われてきた。また、放射線が発生するところには必ず放射線の挙動を評価する必要があるため、中性子工学など様々な研究が派生している。そこでここでは、遮蔽研究を中心に行ってきた遮蔽研究室の歴史をたどり、その研究の概要について紹介する。

 

13:50-14:50 遮蔽設計例等の紹介

 ・「日本アイソトープ協会新施設の紹介およびRIセキュリティについて」

               木村 俊夫 氏(日本アイソトープ協会)

【講演概要】国内へのRI供給の拠点として建設され、2018年より稼働を開始した日本アイソトープ協会川崎技術開発センターの概要及び施設内の主にCo-60大量線源等を取扱うホットケーブの遮蔽材や漏えい線量の状況について紹介する。また、障害防止法から規制法に名称が変更され2019年9月より新たに取り入れられた改正RI法の防護(セキュリティ)について、その概要を説明する。

 

 ・「核種組成・線源強度計算コードの現状」

               石川 智之 氏(伊藤忠テクノソリューションズ)

【講演概要】核種組成・線源強度計算コードは、原子炉の崩壊熱計算のために整備された実験データやラィブラリを基に作成された総和計算コードとして開発されてきた。現在、燃焼計算としても一般的に利用されているORIGEN2に対し、ラィブラリの作成方法や開発経緯について説明し、現状での適用範囲や検証方法、および今後の開発への期待について紹介する。

 

14:50-15:00 休憩

 

15:00-16:50 原子力施設の廃止措置関連

 ・「JPDR廃止措置プロジェクトにおける放射能評価」

               柳原 敏 氏(福井大学)

【講演概要】JPDR(動力試験炉)はわが国で初めて原子力による発電を行ったBWR型の原子炉施設で1963年から1976年まで運転された。その後、1986年からは解体作業(廃止措置)が進められ1996年に完了した。JPDR廃止措置プロジェクトは、大型発電炉の廃止措置に向けた技術の実証の場として位置づけられ、8項目(解体システムエンジニアリング、放射能インベントリ評価技術、放射能汚染非破壊測定技術、解体工法・解体機器など)の技術開発が実施されるとともに、解体作業、計画検討、作業管理などにおいて開発技術の適用と評価がなされた。放射能評価は、解体計画の策定、廃棄物管理、被ばく低減策の検討などにおいて重要であることから、JPDRの放射能特性の調査は詳細に実施された。本講演では、計算と測定による放射能特性の評価結果とその適用などについて紹介する。

 

 ・「ふげん遮蔽コンクリート放射化解析評価」

               吉田 昌弘 氏(公益財団法人原子力安全技術センター)

【講演概要】平成17年日本原子力学会春の年会において、ふげんを対象とした中性子束密度と放射化計算をDOT3.5とORIGEN79で評価した結果を報告した。また、平成19年春の年会では、モンテカルロ計算コードMCNP5による計算値と放射性核種濃度分布の測定値との比較評価を行い、MCNP5コードを用いる場合の注意事項を検討し報告した。本講演では、主にMCNP5コードでの生体遮蔽体コンクリート放射化解析評価の概要を再度報告する。

 

 ・「福島第一原子力発電所廃炉に係るJAEAの活動

- 格納容器内線量率分布評価手法とその応用 -」

               奥村 啓介 氏(JAEA)

【講演概要】福島第一原子力発電所(1F) の内部調査により得られる線量率実測値は、空間的にも時間的にも断片的な情報である。そこで、燃料の燃焼計算や炉内構造物の放射化計算などにより得られた核種組成に基づく線源計算、放射線輸送モンテカルロ計算による単位線源に対する線量率分布計算、および事故進展解析や内部調査の結果を組み合わせ、原子炉格納容器(PCV) 内の3 次元線量率分布を予測する手法を開発した。本講演では、その計算手法と1F応用について紹介する。

 

16:50-17:00 今後の活動等(フリーディスカッション)

17:00     閉 会